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幾何学時計

社会復帰を目指す元引きこもりの日記。でも多分ドラゴンボールの話題が多い。

無題(2編)

「そもそも言葉ほど不確かなものはない。

 燃える氷、生ける死者、永遠の愛……存在しないものでさえ言葉の上でだけは、いとも簡単に成立してしまう。
 言葉とは、夜霧に映る影より不確かで、朝に見る夢より遥かに曖昧な、幽鬼のごとく実体なきもの。
 それに支えられる我々人間など、覚めれば消える一夜の夢に過ぎぬのだ」

 

「真に美しいものを目にした時の感動。
 それは言葉では到底捕まえられず、絵でさえも捉えることはできない。
 他者に見える形でその思いを表現できる唯一のものは、語る術はいうまでもなく、形はおろか、色さえもない涙だけなのだ。
 ならば人の思いとは、見ることも触れることも、永遠に叶わぬものなのだろう」

祝杯

 涙で薄めた血は、神の言葉、夜の露。
 それを受け止めたるは銀の杯。
 天から落ちた星が海の中、真珠へと変ずる如く、それは杯の底にて薔薇の香り高き天の美酒と成る。
 口にすれば、魂を愛撫するかのように、体の隅まで染み渡る。
 恋慕の如く我が身は熱に浮かされ、押し出される罪のように涙が溢れだす。
 毎夜、神への感謝と賛美のもとに繰り返す。
 畏れながらも、天より零れたる水の花弁への口づけを。
 罪を数え、悔恨と共に飲み干せば、涙と共に罪は薄められよう。
 天の美酒は夜の露。ならば、飲み干す先に朝は来よう。

救済


 我が神よ、何卒我を救いたまえ。
 まともに散ることさえ赦されぬ愚かな徒花を、黄金でできたその弦楽の指で摘みとり、
 毒に萎れた惨めな花をねじきり、過ぎた苦悩に折れた茎を砕き、自己を厭う気持ちで裂けた葉をちぎり捨て、汝の足下に広がり足る、恒久の花園から取り除きたまえ。
 かつてこのような出来損ないが生まれたなどと誰もわからぬよう焼き払い、残った灰を深海の底の更に底、混沌の裾野、永久の虚無へと捨て去りたまえ!

 原罪の土に咲きたる我が身を、汝の慈悲の雨にて押し流し、
 罰に焼かれ、汝の治める世より消えたることで、償いと献身の善行を果たす唯一の機会を、罪深き我が生の末期に与えたまえ!

死の舞踏

 清浄な賢人であった男は己の肉体を切り刻み、涙と血で練り上げて、強靭な肉体へと変貌させる。

 悲壮な自戒を舞台衣装として身に纏い、父祖の断末魔を開演の合図に、熟れた薔薇の敷き詰められた黄金の劇場で剣舞を舞う。

 燃える月の刃は、絨毯代わりの薔薇を映し、血に濡れた白磁の女の肌のように怪しく光る。
 男の舞踏の激しさに、薔薇の花弁は舞い上がり、紅涙のように降り注ぐ。

 その絢爛さに無人の観衆は魅了され、万雷の拍手で讃えれど、男が耳を貸すことはない。

 認められぬ観衆は幽鬼と変わらぬ夜の露。
 ゆえにその真価を見ることが適う者はおらず、もとより知ることは許されない。
 男は神の数の形に刃を振り下ろし、罪の首を切り落とす。
 こうべの落ちた首からは夜が流れ出し、地上に永遠の闇が垂れ込める。

 男から逃げ出そうとするかのごとく、罪の血は這うように広がりゆく。
 その様を見た男は、一滴の血でさえ赦されざる罪の子と言わんばかりに、赤く染まった地へと刃を突き立てる。
 それは男と大地を繋ぎ、狂乱に燃えたぎる岩漿の血脈が大地を貫く。
 その熱さに戦く大地は、陶器の女のごとくに砕け散る。

 この偉業を讃える者はおらず、ただ男一人がそれを知る。
 ならばそれは終わりなき舞台。
 観衆のいない舞台の幕は下ろせない。
 終幕を迎えられぬ舞台は無限の地獄。真実と幸福へ永久に辿り着けぬ、偽りの神の国

 男は一人、罪に汚れた大地に支えられて生きていく。

 

とりあえず投稿してみる。

 いざ投稿しようとすると、何を載せればいいのかわからない。